ではいよいよ筋線維の中を見ていきましょう。
筋は、見事に階層構造をしています。
加算的に積み重ね構造として構成されているのです。
1つの細胞として、筋線維の中は当然細胞小器官があるはずです。
いくつもの筋芽細胞が融合して筋線維になっているわけですから、核もいくつもあるわけですが、(詳しくは筋線維の発生について)
分裂能を必要としない為か、用済みになった為か、端に追いやられ、筋形質は主に「細い糸」で満たされています。
この細い糸は1つの筋線維内に数百本から数千本含まれているので、全体の約3分の2ぐらいを占めていることになります。
この糸が収縮・弛緩という仕事の為に、筋線維という細胞を特徴づけています。
筋細胞と言わずに、筋「線維」というのもこの糸があるからです。
この糸を筋原線維と言います。
筋原線維は筋収縮起こす器官であるため、収縮要素とも呼ばれています。
その他には
・筋小胞体(sarcoplasmic reticulum)
・横細管(横行小管、T管、transverse tubule)
・ミトコンドリア
・酵素
・脂肪
・グリコーゲン粒子
などが存在しています。
muscle fiber
筋線維には「筋原線維」と呼ばれる、幅約1ミクロン(1/1000mm)の細長い円筒状のものが多数詰まっている。これが収縮器官だということまでわかったと思います。
筋原線維の最重要部は、2種類のひも状のフィラメントからなっています。つまりミオシンフィラメントとアクチンフィラメントです。
これらのフィラメントの寸法単位はマイクロメートル、またはナノメートル。まさに、ミクロ・ナノの世界です。
この「超マイクロマシン」とも言うべき筋フィラメントは、恐ろしく微小ですが、天文学的な数が集まって同時に働く時、大きな力を出すのです。
筋原線維の太さは約0.5~2μm(1μm=0.001mm)、円筒状に縦方向にぎっしりと筋線維の中に配列しています。
光学顕微鏡で縦断像を観察すると、
1本1本の筋原線維はその走行に沿って明るくみえる部分(明帯・light band)と暗くみえる部分(暗帯・dark band)とが交互に規則正しく存在しているのが分かります。
縞模様に見えるこの模様を、横紋と言います。
心臓の筋肉、心筋にも横紋が見られます。
細胞学者、組織学者、生物学者たちは、
骨格筋に横紋が見られることを、かなり以前(1940年代にはわかっていた)から知っていました。
しかし、それがどういうもので、どういう働きをしているのかは良く分かっていませんでした。
幾何学的美しさを持つ横紋は、とても不思議なものとして彼らの目に映ったことでしょう。
striations
筋線維において、隣り合う1本1本の筋原線維のI帯とA帯は、それぞれ同じ高さに揃って並んでいるので、筋線維自体にも規則正しい明暗の横紋が見えることになります。
sarcomere
隣在する2本のZ線(Z版)の間を筋節(サルコメア)と呼び、筋細線維の形態的ならびに機能的単位とみなしています。
筋節は、筋線維が形成される時に組み立てられます。
筋節の長さは約2.5μmで、筋細胞の長さの0.01%にすぎないため、1つの筋細胞は10,000ほどの筋節を含むことになります。
筋節の長さは筋線維の収縮・弛緩によって変化し、弛緩時には約2.5μm、収縮時には約2μmあるいはそれ以下になります。
thin filament and thick filament
H.E.Huxley(1924~2013)
光学顕微鏡だけでの観察では、横紋の微細な構造はわかりません。
それは電子顕微鏡による観察で初めて明らかにされました。
横紋の微細構造の解明は、1940年代の後半から試みられてきましたが、
初めて鮮やかな像として浮かび上がらせたのは、かの有名なノーベル賞も受賞したH.E.Huxleyです。
「横紋のA帯には太いフィラメントがあり、一方細いフィラメントがA帯とI帯の両方に存在している。」
「太いフィラメントはH帯に入り込んでいるが、細いフィラメントはH帯に入り込んでいない。」
というわけで、筋原線維の中には細いフィラメントと太いフィラメントがあり、これらが筋節に配置されていることがわかったのです。
この配列は、筋原線維を構成する「太いフィラメント」と「細いフィラメント」の配列と対応づけられました。
筋原線維の断面を見ると、I帯、A帯、H帯に応じて
・細いフィラメントの六角形状の配列(I帯)
・太いフィラメントが、六角形状に並んだ細いフィラメントの中心に位置した配列(A帯)
・太いフィラメントの三角形状の配列(H帯)
が観察されます。
I帯は細いフィラメントのみ、A帯では太いフィラメント細いフィラメントが重なっています。
しかし、A帯の中央部では細いフィラメントは重ならないので、H帯を生じるのです。
太いフィラメントの中央部はやや太くなり、さらにフィラメントは横送する太さ4μmの微細なフィラメント様構造でお互いに強く結ばれています。
こうして、A帯の中央に横送するM線ができ、太いフィラメントはお互いに結合されます。
太いフィラメントは横断面からみると、約30~40nm(1nm=0.001µm)の等間隔に並び、規則正しい幾何学パターンをつくります。
A帯において太いフィラメントと細いフィラメントが重なり合うところで横断面をみると、
一本の太いフィラメントのまわりを取り囲むように6本の細いフィラメントが整然と6角形状のパターンをつくって配列しています。
(断面図においては、太いフィラメント1本に対して、2本の細いフィラメントが存在しているということになります)
A帯の長さは一定で、収縮・弛緩によって変化しませんが、I帯の長さが変化し、弛緩時には長く、収縮時には短くなります。
強く収縮して、筋細胞の長さが弛緩時の長さの約50%にまでなると、I帯は消失します。
太いフィラメントと細いフィラメントは部分的に重なり合っています。
すなわち両フィラメントが重なり合う部分が暗く、重なり合わない部分が明るく見えるのです。
Z線は細いフィラメントに接続し、筋原線維を横切っている膜と考えられています。
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